log: 購入した本 (2023年2月)

 

トポロジーへの誘い: 多様体と次元をめぐって』

www.nippyo.co.jp

本屋さんで軽く眺めたところ、多様体トポロジーについて、いわゆる教科書的な厳密な感じではない感じでかなり先のことまで紹介されているので気になっていた。

最近同じ著者の『多様体の基礎』を読みはじめているのだけれど、まとまった時間が取りにくい中厳密に議論をフォローしようとするとなかなか進まなくてだんだん飽きてくる気がするので、先にこちらを読んでしまってもよいかもしれないと思っている。

 

ミシェル・フーコー: 自己から脱け出すための哲学』

www.iwanami.co.jp

フーコーもそうなのだけれど、よく考えたら私は20世紀のフランス哲学について何も知らないな…と思ったので、まず手始めに新書の解説を一冊読んでから考えようと思った。こういう新書で、ちょっとずついろいろな哲学を見学(観光?)するのを、できれば学部生の早い段階でやっておくと後々役に立ちそうなのだけれど、少なくとも私は学部生時代とにかくハードな原著(岩波文庫限定)に挑むのがえらいと思っていたのでいろいろ遠まわりだったなあと思う。

 

プログラミング言語の形式的意味論入門』

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b304793.html

以前からプログラム意味論に興味があったのだけれど、読みやすそうな翻訳本が出たので近いうちに勉強することにした。原著の最後の2章(第13章(再帰型)、第14章(非決定性、並行性))は翻訳では割愛されているとのこと。ただし、今のところそのあたりのトピックについては何も知らず、最後まで読むことができたらそのあたりを改めて勉強するべきかどうかはわかるだろうと思うので気にしていない。

 

『令和5年 イメージ&クレバー方式でよくわかる 栢木先生の基本情報技術者教室』

gihyo.jp

基本情報技術者試験の参考書でもっとも評判のよさそうな本だったため。個人的には、どうせ説明が足りないところは自分で調べて補足するので、参考書自体のわかりやすさをそこまで重視しているわけではないのだけれど、なにをどのレベルまで勉強しておけばOKかの基準はほしいので、バランスの取れてそうな本を一冊手元に置いておこうと思った。問題集もいろいろ売られていたのだけれど、たぶん買わないと思う。

log: 購入した本 (2023年1月)

Philosophpy of Physics: A Very Short Introduction
  • David Wallace (2021). Philosophpy of Physics: A Very Short Introduction. Oxford: Oxford University Press.

global.oup.com

最近、物理学の哲学をちょっとずつ勉強したいと思いはじめて、そのわりに量子力学の哲学と時空の哲学が主なサブ分野としてある、というくらいのことしか知らなかったので、忙しくても読めそうな、あまり長くない入門書を選んだ(といっても、Very Short Introductionsシリーズは慣れていないとけっこう難しい。哲学系だと、ひとつの授業のレポートを書くためのインプットのうちの80%は、関連するVery Short Introductionを一冊読めば得られる、ぐらいの印象)。

  • この本では、量子力学の哲学、時空の哲学に加えて、熱統計力学の哲学にも一章が割かれている。非相対論的古典力学の哲学、電磁気学の哲学、連続体力学の哲学、物性物理学の哲学などもあったりするのだろうか?
  • 他の物理学の哲学の入門書としては、Princeton Foundations of Contemporary Philosophyシリーズから出ているのが比較的有名だと思う。ただこちらは量子力学の哲学と時空の哲学で分冊になっている…

Very Short Introductionsシリーズについて、学生時代、図書館に並んでいるのを見ても何も思わなかったのだけれど、洋書ペーパーバックとしては装丁が異様にしっかりしているので、これを読み終わったら他にも気になったものを何冊か集めてみようと思う。

 

General Relativity: The Theoretical Minimum
  • Leonard Susskind & André Cabannes (2023). General Relativity: The Theoretical Minimum. New York: Basic Books.

www.basicbooks.com

The Theoretical Minimumシリーズの、一般相対性理論を扱った巻。去年に第3巻「特殊相対論と場の古典論 Special Relativity and Classical Field Theory」を読み終えて以来、続編を待っていた。(対応する講義動画はいまもYouTubeで見ることができるはずで、本が出ないのであればそちらを見ようと考えていたところだった。)

共著者の方は第1巻から第3巻のフランス語訳をされた方らしく、ホームページを見ると第5巻「宇宙論 Cosmology」、第6巻「統計力学 Statistical Mechanics」も今後出版されそうなので、そちらも楽しみに待つことにしたい。

memo:『物理学における理想化』(Cambridge Elements)

Cambridge ElementsのPhilosophy of Physicsシリーズから、「物理学における理想化」をテーマにした本が出版されているのを見つけた。2023年1月26日までオープンアクセスで、無料で閲覧、ダウンロードができる。

  • Elay Shech. (2023). Idealizations in Physics (Elements in the Philosophy of Physics). Cambridge: Cambridge University Press. doi:10.1017/9781108946742

www.cambridge.org

 

Abstract:理想化 idealization は物理学において遍在している。それらは、理論、法則、モデル、そして科学的表象 scientific representation に入り込む、歪み、あるいは偽なるものである。[理想化にかんして]さまざまな問いが浮かぶ:理想化とは何か?なぜわれわれは理想化にうったえるのか?そしてその理想化はどのように正当化されるのか?理想化は物理学にとって本質的か?もしそうであるならば、それはどのような意味で、どのような目的に対してそうなのか?理想化は、どのようにして真正な理解をもたらしうるのか?電子やクォークといった観察不可能なものの存在を信じるのは、それらがわれわれの最もよくできた理論において必要不可欠であるからなのだとすると、われわれは必要不可欠な理想化 indispensable idealization の存在をも信じるべきなのか?本書はそのような問いに取り組み、物理学における理想化にかんする哲学的問題へのひとつの立場からの精選された導入を提示する。トピックとして、理想化の概念、理想化を導入する理由、抽象化 abstraction、近似 approximation、ありうる[理想化の]分類と正当化、そして数学的プラトニズム mathematical Platonism、科学的実在論 scientific realism、科学的理解 scientific understanding といった諸問題への応用を扱う。(Shech 2023, p.iii)

Keywords:理想化 idealization、抽象化 abstraction、近似 approximation、科学モデル scientific models、科学的表象 scientific representation (Shech 2023, p.iii)

 

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Introductionを軽く見て、難しそうだけれど面白そうと思ったので、後で読むかもしれない。Introductionでは、物理学における理想化の二つの例として、ブラウン運動とアハラノフ=ボーム効果が挙げられている。私はどちらの現象のこともほとんど知らないのでかなり戸惑った。

アハラノフ=ボーム効果というのは、荷電粒子が電磁場のない領域で電磁ポテンシャルの影響を受ける現象のことらしい。普通に磁場があれば、荷電粒子は磁場の影響を受ける(ローレンツ力)ことは古典物理的にも説明できるのだけれど、そうではなくて、磁場を完全に遮蔽して漏れ出さないようにしても、やはり荷電粒子はなんらかの物理的影響を受ける(そしてこれは古典物理的には説明できない)。

本では、アハラノフ=ボーム効果の理論的導出で使われているいろいろな理想化に主として注目しているのだけれど、この現象は「電場、磁場と電磁ベクトルポテンシャルのどちらがより基本的な物理量か」という問題にもかかわっているらしい、というところも個人的にはとても気になっている。

note: 2022年読んだ本の振り返りと2023年目標

 

 

1 2022年振り返り

1月~3月
  • Leonard Susskind & Art Friedman (2018), Special Relativity and Classical Field Theory: The Theoretical Minimum (Penguin).
    • Theoretical Minimumシリーズの第3巻。2021年の秋ぐらいから読みはじめて、この時期は後半部分を読んでいた。
    • 初心者向けといいつつ、徹底してラグランジュ形式の場の解析力学で議論するという野心的な企てに満ちた本で、物理学科ではないけれど軽く理論物理の世界をのぞいてみたいという人にはかなりおすすめしたい。
3月~4月
  • I. M. Singer & J. A. Thorpe (1967), Lecture Notes on Elementary Topology and Geometry (Springer).
    • いろいろな人がおすすめしているのでたぶん名著なのだけれど、この本は自分にはまだ難しかったので、第1章の終わりあたりで止まっている。
    • ただ、丁寧に読んで位相空間論の初歩についてはちょっと自信がついたので、多様体トポロジーなどの応用的なところをもっと簡単な本で先にいろいろ見てみてもいいのではという気持ちになりつつある。
5月~7月
  • Noam Nisan & Shimon Schocken (2015), 『コンピュータシステムの理論と実装: モダンなコンピュータの作り方』斎藤康毅訳 (オライリー・ジャパン).
    • コンパイラを扱う第10章の手前まで来て、終わりまでの理論的な話の展開が見えてきたので、残りはまあいいかと思ってそこで止まっている。
    • ハードウェア階層の話やバーチャルスタックマシンの話はとても楽しめたし、コンパイラを作る中で出てくる構文解析器の実装もとても勉強になりそうなので、モチベーションが復活したらまた挑戦したい。
夏休み
12月
  • 雪江明彦 (2010), 『代数学1: 群論入門』(日本評論社).
    • しばらく間があいたので、集合論の初歩あたりから復習して感覚を取り戻したくなった。2021年夏に軽く群論を勉強したのだけれど、そのときはあまり面白さがわからなかったため、今回はもっと楽しめたらと思う。

2022年は最後まで読み終えられた本が少なく達成感があまりなかったけれど、こう見てみると分野のバランスはわりと取れている気がする。

 

2 2023年目標

2.1 数学・物理

私にとってのより長期的な目標は「30歳になるまでに一般相対性理論ゲージ理論の概要を理解する」かなと思うようになってきた(前から漠然と理解したいなーと考えていたのだけれど、目標という感じではなかった)ので、2023年はこの目標のための足場固めをメインにやってみたいなと考えている。具体的には:

他にもやるべきことがあるかもしれないけれど、そこは随時足していくということで。

2.2 プログラミング

半分はお仕事なのだけれど、挑戦したいことはいろいろある。

あとは基本情報技術者試験を受けるとか。